教壇に立って 第0話
教壇に立って、まだ数年。
僅かな経験の中ではあるが、つくづく感じるのは、この世界は本当に狭い。ただただ狭い。
しかし、とてつもなく深いのだ。底が見えないくらいに。
教師になる前は、民間で販売業の仕事をしたり、自営業を営んでみたり、家に引きこもったりと紆余曲折の人生であった。
最終的にたどり着いたのが、この「教育」という仕事であった。
なぜ、自分は「教育」という仕事を目指したのだろう。
それも「公教育」という仕事を。
公教育とは、いわば国公立のことを指すが、私の勤めているのは、地方自治体が設置する公立学校である。
どの地域の、どの家庭にある子でも「ウェルカム!」なのが、公立学校の原則である。
つまりは、あらゆる環境に身を置く子どもたちが、ただ生まれた年月日が同じという理由だけで、一同に集合してくる場所でもあるのだ。
「そんなの当たり前だろw」と鼻で笑われそうであるが、実はこのことが どれだけ恐ろしいことであるか、そして、教壇に立つ上でどれだけ腹をくくらなければいけないことなのか、教師になってようやく実感するのである。